借金して進学する意味は?奨学金返済中の私見を徒然に。『「奨学金」地獄』岩重佳治著

      2018/04/15

最近、奨学金について返済ができないという記事を多く見るようになりました。「自己破産」とか、「地獄」とか、否定的な意見が目立つ一方で、「自己責任」「借金だから返して当たり前」という声も多く見られます。

私は私立大に通い、その間、月6万円の奨学金を借りました。卒業時の借用金額は「270万」です。大学を卒業して約15年ですが、今も「月々1.5万円」を返済しています。返済が終わるのが2018年9月。残りあと1年ちょっと!! ※月1.5万×15年=270万

そんな私は、世間的にいうと、「計画的にしっかり返済している奨学生」、という事になるのだと思います。「借りた金を返している、当たり前の事をしている人」。という風に言われるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか?返済している人は初めから「計画性のあった人」で、返済していない人や何らかの理由があって返済できない人は、初めから「無計画で考えがなかった人」なのでしょうか?

正直、私には返せない理由がよく分かりませんでした。事故や病気で働けないなら分かるけど、健康そうな人もいるのに、なぜ返せないのか。何も考えていないのか。お金に対して責任感がないのか。不誠実なのか。でも、デモをしている学生はそういう様には見えないし、切羽詰まり感を感じる。。。何か私が知らない事があるんだろうけど、、それは何なんだろう、、、

と、何となくぼんやり考えていた時に、興味深い本を見つけました。その名も『「奨学金」地獄』!!。早速読んでみました。そして、どうしてそんなにも奨学金問題が騒がれているのか、また、私のぼんやりした奨学金に対するイメージや、自己責任と言っている人たちと今現在苦しんでいる人たちの、考えのギャップがどこから来るのかも、ある程度理解する事ができました。

 

という事で、私の体験談も交えながら、この奨学金問題について考えてみようと思います。では、早速いってみましょー!

※ここでは大学進学をメインに書いています。短大や専門学校には殆ど触れていません。というか、触れられません。。。というのは、私が大学の事しか知らないからです。けして「進学=大学」という考えが当たり前と思っている訳ではないですので、ちょっと釈明をば、、、。

※書いていたら、ものすごく長くなりました、、。興味あるとこだけ読んでくださいね〜。

 

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はじめに、奨学金とは

奨学金にも色々ありますが、基本的には以下の定義です。

奨学金制度とは、

  • 学力や能力を持っている
  • 進学に対する意欲がある
  • 家庭の経済的理由により進学が難しい

以上の条件にあてはまる学生のために、国や民間の育英組織が学費の一部を負担したり、学費を貸し出す制度です。(家庭の経済的な問題にかかわらず、学生本人の卓越した能力や学力に対して給付される奨学金もあります。)

引用元:お金を学べる情報ポータル ファイグー 「【保存版】奨学金制度を徹底解説。これだけは申込み前に知っておこう!
(2017.5.24 アクセス)

 

上記はとても分かりやすく簡潔な説明です。ですが、最近の奨学金問題(返済ができなくなって自己破産する人が多数出現など)を踏まえて、歯に衣着せずに表現してみると、こんなところだと思います。「学生が借りられる借金」。普通、学生はお金を借りられません。金融機関からお金を借りられるのは基本的には社会人(働いている人)で、収入がある人です。なので、収入が不安定な人はそもそも金融機関からの借金(ローン)ができません。もしできても、危険なやつや、結構な低額です。

じゃあ、学生はなぜ借りられるのか。それは将来、その賢い学生がしっかり稼いで返済してくれるだろう、という信用でお金を借りるのです。つまり、未来にリスクを負うわけですね。

 


 

ちょっとここで体験談

私が奨学金を借りる事になったのは、父親が退職して、学校に提出した源泉徴収が0円で、その金額に驚愕した学生課から急遽呼び出しを受け、その場で奨学金を勧められたからです。高校の成績は良かったので(内申点とか気にした事ないし、何が書かれてたか知らないけど)、学生課の担当者が「(育英会無利子の)第1種に受かるかもしれない」と教えてくれ、それならば。と申し込みをしたのでした。

さて、ここで確認です。私は将来の返済について、どれくらいの負担になるか考えていたか?答えはNOです。すみません。多分総額は聞いたけど、返済は月々1.5万だから、みたいな説明だった気がします。

「そんな意識で借りるんじゃねーよ!」とかネット民の声が聞こえてきそうですが、取り敢えず、やりたい事はあったし、勉強をしたい!と思っていたし、卒業してしっかり働く意欲もあるので、大丈夫だろうという意識です。まさか自分が就職できなくて非正規社員になって、もしかしたらそこはブラック企業で(当時はブラック企業なんて言葉も聞いたことない)体調を崩して働けなくなって返済できなくなるリスクがある。なーんて意識は全くありませんでした。すみません。

 

なぜ借金してまで進学するのか

さて、ここで、ネットの声に耳を傾けてみましょう。「なんでお金ないのに進学するの?」「借金してまで行く必要があるの?」「Fランクの大学に行くくらいなら働いた方がいい。」などなど。色々あるのでハショリますが、気になる方はgoogle先生に聞いてください。「奨学金」「借りて」で検索するとたくさん出てきます(2017年5月25日時点)。

 

 

じゃあ、そもそもなぜ大学に行くのか。以下は、奨学金を借りている人だけの回答ではないですが、参考までに見てみましょう。

 

第2章 大学における学習状況や大学生活の実態」平成17年度経済産業省委託調査 進路選択に関する振返り調査-大学生を対象として- [2005年]
ベネッセ総合研究所

 

うーん。ちょっと古いですね。12年前のデータになってしまいました。

他にないかなーと思ったら、2013年のデータを見つけました。首都圏の学生に限定されていて回答者が112人を少ないですが、参考になると思います。

 

『学歴・学生生活・就職に関する意識調査』
2013 年 04 月 05 日
特定非営利活動法人 Check
http://www.checkatoilet.com/

 

だいたい雑に大きく分けると以下でしょうか。

  1. 勉強がしたい(教養・専門知識・資格免許)
  2. 学歴を得たい(就職に有利)
  3. 進学が当たり前だと思ってた(なんとなく、みんな行く等)
  4. その他(将来への不安、自由への憧れ等)

その進学理由は、借金するほど大切なものか

正直、3(進学当たり前)と4(その他)は考え直した方がいいと思います。何のために進学するか目的が不明確なら、一度働いて、本当に進学が自分にとって必要か考えた方がいいでしょう。進学はお金もかかるし、時間もかかる。一度働けば、進学に必要な金銭感覚も身につくかもしれません。特に、「将来への不安」については、もしかしたら、不安を先送りにしているだけかもしれません。大学を卒業したら不安がなくなるのか?というと、全くそうではありません。誰しも、不安があるのです。社会人になっても。親になっても。

2(学歴を得たい)は、学生当時は分かりませんでしたが、社会人になった今、求人に書かれている条件を見るたびに実感します。やっぱり、選択肢は大卒の方が広いです。だいたい気になる求人をみると「大卒、短大卒」が多いです。

じゃあ実際どうなのか。データを見てみましょう。
まず、大卒の就職内定率。ちょうど厚生労働省の平成29年5月19日プレスリリースの記事がありました。

●~大学生の就職率は 97.6%と前年同期比 0.3 ポイント上昇し、 平成9年3月卒の調査開始以降、過去最高~

「平成 28 年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)について」厚生労働省

 

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では、高卒就職内定率はどうでしょうか。こちらも厚生労働省の平成29年5月19日プレスリリースから抜粋です。

●~高校生の内定率は 99.2%と前年同期比 0.1 ポイント上昇。 昭和 63 年3月卒の調査開始以降過去最高。平成 29 年3月末現在

第7表 高校新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定率の推移(3月末現在)」厚生労働省

 

あれ?高卒のほうが内定率が高いみたいです。高卒は就職先が少ないと言うイメージでしたが、そうでもなさそうです。では一方で、初任給はどうでしょうか。こちらは平成24年11月 15 日プレスリリースと5年近く前のデータになってしまいますが、参考になると思います。

 

男女計 大学院修士課程修了 226.1千円
大学卒 199.6千円
高専・短大卒 170.1千円
高校卒 157.9千円

平成24年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:1 学歴別にみた初任給」厚生労働省

 

 

高卒と大卒では初任給の差が4万近くあります。月の差額が4万として、年間48万の差額です。これは、多額のお金をかけて大学に進学する理由として十分なのかどうか。どうでしょう。なんとも言えません。就職に有利という点では、選択肢の幅は広がります

じゃあ更に、生涯賃金についても確認してみましょう。

パッとみると、6000万近く差があります。となると、4年間授業料や生活費など諸々支払っても、元は取れると考えるのが自然かもしれません。これについて、面白い記事があったので時間がある方は読んでみてください。「「大卒→中小企業」より「高卒→大企業」の方が生涯賃金は2割高い(PRESIDENT online 2015.10.14)」

 

そして、1.勉強がしたい(教養・専門知識・資格免許)については。本当にしたい内容であれば、進学する意味があると思います。上記の生涯賃金の事も頭に入れると、やりたい事が明確で、勉強する意欲も高く、将来しっかり働きたい!!という意志がある人は奨学金を借りて進学する理由が十分あるのではないでしょうか。

ただし、金銭面についてしっかり確認しておいた方が良いでしょう(今の段階では)。目指す職業の初任給がどの程度か、くらいは確認しておいた方が良いと思います。

 

 

『「奨学金」地獄』 から見える現状

ああ、やっとここまで辿り着けました。さて、ではなぜ、私は奨学金を返していけたのか。また、なぜ「奨学金問題」に巻き込まれなかったのか。『「奨学金」地獄』を読んで、今まで気づかなかった点がいくつかありました。それをザクッとまとめてみたいと思います。

奨学金が変わった理由1:環境の変化

私は2003年大学卒ですが(あ、年齢が分かりますね、、、)、その頃から比較すると、以下の点が大きく変わっているようです。

  • 学費の高騰
  • 家計の悪化

まず学費ですが、学費については常に右肩上がりです。下がる事はありません。まぁ、だって、少子化で生徒も少なくなってますしね。一人当たりの回収率を高めないと学校も成り立たないでしょう。

今月の視点 2016年1月 国立大「財政基盤」の危機!」旺文社情報教育センター

一方、家計はどうでしょう。以下のグラフは厚生労働省平成26年度のレポートからです。それぞれp16にグラフがあります。パッと見、緑(1世帯当たり平均所得金額)が極端に下がっているようには見えません。

グラフで見る世帯の状況」p16 厚生労働省

 

ですが、下のグラフを見るとなるほどー。と思います。

グラフで見る世帯の状況」p16 厚生労働省

緑の棒(1世帯当たり平均所得金額)が、ずいぶん左によっています。年収100〜400万の間がもっとも多いです。つまり、全体の平均値は極端に変わっていないんだけど、分布が変わってしまいました。ごく少数の人が極端に所得が高く、多くの割合の人が年収100~400万の間にいる。という事です。

国立で年間約60万(私の時は40くらいだったのに)。私立で約90万(私立の学費はピンキリです)の学費を払うと、年収400の場合、残りは310〜330万です。そうすると、月25~27万で何とかやらないといけません。家賃や食費や光熱費や交通費や消耗品や何やらかにやら、、、。

そして、もしこれが4人家族(両親、子供2人)でもう一人も大学生だとすると、国立の場合でも残り250〜270万ですね。大学は学費だけじゃなくて、生活費も必要だし、家賃もある。そして両親の生活もある。となると、奨学金を借りないとそもそも学校には通えない、というのは納得できます。

また、更に仕送り自体も少ないだろうので、アルバイトをしながら生活費を賄う、という状況の学生が多いのも納得です。

 

奨学金が変わった理由2:日本育英から日本学生支援機構への組織改編

この点については、本からそのまま引用が分かりやすいでしょう。この『「奨学金」地獄』は、育英会について書かれているので、ここでは奨学金=育英会として考えてください。

なぜ奨学金は変質したのでしょうか。
それは、1980年代からの構造改革と、それにともなって2004年に日本育英会が廃止されて独立行政法人日本学生支援機構へと組織改編が行われたことに起因します。そして推し進められたのが、奨学金への財源への民間資金の大幅導入でした。
民間資金の導入を推し進めれば、効率的な運営が求められます。奨学金が金融事業化し、有利子の第二種奨学金の比重が増のは必然です。
同時に、民間から資金を調達して事業を継続するためには、絶対に崩せない至上命題があります。それは回収率のアップです。回収率が高くなければ、投資家から安全・優良な投資先とは見なされないからです。
(略)その回収率は第一種奨学金で97.3%、第二種で96.4%(2015年度)と非常に高くなっており、これは、「メガバンクと同等の高さだ」と言われています。(略)回収率の高さは、裏返せば奨学金利用者からの回収強化の結果にほかなりません。

第4章「奨学金」という名の学生ローン p146 『「奨学金」地獄』岩重佳治 2017.2.6

 

という事です。

確かに、一度返済が遅れるとすぐ電話がかかってきて、出るまで何度もかかってきます。数ヶ月延滞すると、会社にもかかってくるそうです。そして、一度返済が滞ると、翌月はいくらの引き落としで期限はいつです。というハガキも送られてきます。私もそのハガキを何回か受け取りました。。。

 

※私は1つの口座を奨学金返済用にしていて、そこから月々引き落とされる形にしています。が、数回、その口座の残高が足りなくなっているのに気づかなくて、引き落としができない事がありました。すると、即日電話がかかってきます。で、仕事などで出られないと、何度もかかってきます。ちなみに、022-211-7258ですが、こちらの名前が確認できるまで相手は要件を話しません。「○○△△さんですか?」という問いに「はい」と言わない限り、要件を教えてくれませんので、一瞬怪しい電話に聞こえます。でも結局は借金返済の電話でかなりプライベートな内容なので、他の人には内容を言えないんですね。ということで、怪しいと思っても、この番号から電話があったら奨学金で何かあったんだと思って、出る事をオススメします。ちなみに、「すみません、口座残高が足りていませんでした。入金しておいたので、次は引き落としできます。」というと、「そうですか!ありがとうございます。」と言ってにこやかにすぐ切れます。掛けてくる方も、払えないと言われる場合が多いのか、払えますという時の対応がすごく嬉しそうです。

 

そして育英会はこうなった:極端に厳しい取り立て

本の目次から、タイトルをそのまま引用します。奨学金に関する問題がまとまっているので、この部分だけでも読むと、借りる際に注意すべき点が見えてくるでしょう。

・返済を困難にさせる延滞金
・”ブラックリスト”に載せてあげている?
・「貧困ビジネス」化する奨学金
・不可能な繰り上げ一括請求
・助ける気がない救済制度
・機関保証で引かれる支給額
・保証人に課される過度の負担

p147〜p156

初めから返す気がない人は殆どいないでしょう。でも、体調を崩したり、事故にあったり、予想もしない事が人生には多々起こります。その際に、最終的に返せなくなるリスクは誰でも持っているのです。そんな窮地に立たされた時、今の学生支援機構にある救済制度は不十分だ、というのが現状です。

という事が、実例を踏まえて説明されているのが『「奨学金」地獄』でした。その中でも、一番心に残った事例を一つ、紹介したいと思います。

事例8 重度の障害でも返済を迫る

成績もよく、大学独自の給付型奨学金を受けられる位置にいた女性。突然の心肺停止状態でなんとか一命はとりとめたが、上半身、下半身が全く動かない、胃ろう(胃に直接管を通すこと)で栄養補給をする重度の後遺症が残った。身体障害者1級に認定。大学を辞め、両親はすぐに奨学金の返済を始めたが、医療費の負担が想像以上に大きく、また父親の定年退職を迎えたことで返済が難しくなった。母親は機構に相談したが、開口一番「でも、あなた、お金を借りたんでしょう?」と言われた。

奨学金の規定には自分で食べることができない、言葉を話せない、寝たきりで複雑な看護や必要な場合は免除の対象になるとはっきり書いているが、免除はされず「減額返済申請書」と「返還期限の猶予申請書」が送付されてきた。何度も状況を説明し診断書や障害者手帳の写し、その他書類を送っても「機構の医師が、『回復の見込みがあるかもしれない』と申しております」と述べ、「返還期限猶予の手続きを何度か繰り返した後でなければ、免除の申請は受け付けられません。それがルールです。」と続けた。

p85〜p89 参照

 

私にも、突然倒れた友人がいます。大学院生だった彼は、そのまま亡くなってしまいました。事故や病気、突然死、様々な事が予期せず起こる事は、誰にでも可能性がありますね。もしかしたら、後ろから車に追突されるかもしれない。もしかしたら、就職先が倒産するかもしれない。もしかしたら、働きすぎて体調を崩すかもしれない(私は一度過労で倒れました。体温が34度だったな、、、)。

借りたものを返す、それは当然です。でも、本人の予期しないところで返せなくなったら、どうしたら良いのでしょうか。

 

 

困った時は早めの相談を

学生支援機構にも、窓口がありますが、上記にもありましたように、なかなか思った回答が得られないようです。その場合は、早めに以下の窓口に相談をオススメします(と、書いてあります)。

※以下の窓口はこのブログとは関係ありません。引用です。

 

相談窓口リスト

奨学金問題対策全国会議 (東京都、全国組織)

北海道学費と奨学金を考える会(通称:インクル)

みやぎ奨学金問題ネットワーク

埼玉奨学金問題ネットワーク

NPO法人POSSE

奨学金返済に悩む人の会

奨学金問題を考えるしずおか翔学会

愛知奨学金問題ネットワーク

大阪クレサラ・貧困被害をなくす会(大阪いちょうの会)

奨学金問題と学費を考える兵庫の会(兵庫・奨学金の会)

和歌山クレサラ・生活再建問題対策協議会

p162、163  『「奨学金」地獄』岩重佳治

 

奨学金のおかげで、私は学生生活を送る事が出来ました。そして、私は運良く返済も完了しそうです。でも今から借りる方は、よく考えて借りてください。これは借金です。未来にリスクを負って、本当に進学する必要があるかどうか。一度働いてから進学でもいいのではないか。などなど。ちなみに、アメリカ人の友人いわく、「アメリカでは学費は自分で払うよ。だから一度働いて進学する人が多い。なんでmosakiは自分で払わないの?」だそうです。その時は、ちょっと答えに窮しちゃいましたが、、、。

 

 

余談:そもそも、教育は誰の責任?家庭?それとも国?

さて、ここまで来てちょっと話がそれますが、この点はよく考えておきたいテーマです。というのも、奨学金を借りて未来にリスク負って進学して、卒業したらコツコツ返済すべく日々働く。というのが、本当にあるべき姿なのかどうか。というのも、日本では教育は個々人の責任みたいに考えられていますが、ヨーロッパでは高等教育費が無料の国もあるからです。

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さて、教育を受ける権利については憲法に書かれていますね。

「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」

ええと、第26条です。では、教育を受けさせる責任は誰にあるのでしょう?この質問には、日本人の大多数の人が、親または保護者、というのではないでしょうか。

日本は個人主義だと思います。何かにつけて、「自己責任」を問われる。人様に迷惑をかけないように生きるのが美徳で、生活保護を受けるなんて恥だと考えて一家で餓死を選ぶ人がいるほどです。でも、他の国ではどうでしょうか?ヨーロッパには、大学費用が無料の国が少なくありません。(参考:OECD加盟34ヵ国の大学授業料無償化、給付制奨学金の有無と受給学生割合

実際、私の大学時代の友人は大学卒業と同時にフランスに行き、そこの大学で勉強をしました。学費は無料だったそうです。そして彼女は今、フランスで通訳として働き、フランスの男性と結婚してフランス国籍になりました。大学費用を無料にする価値というは、ここにあるのでしょう。結局のところ、フランス経済に貢献する結果になるわけですから。つまり、「国のためになる」という事です。

 

話は元に戻りますが、これは、教育は誰のためにするものか、という事を示しているんだと思います。大学進学を選ぶ人は、どうして進学するのでしょう。今回の意識調査から得られた結果は、全部「自分のため」ですね。だって、それは自分で奨学金を借りて、または親に出してもらって進学するからです。お金のリスクは親または自分で負っている。つまり、リスクを負う人が利益を教授する訳です。

では、国が費用を出す場合は、誰のために行くのでしょう。私の友人のロジック(国が学費を負担する)で考えると、国が利益を得るという事になります。

日本は識字率が100%近いです。でも昔はそうではなかった。でも教育を義務化する事で、誰しもが初等・中等教育を受けられるようになって、識字率が高くなり、最低限の読み書きそろばんを、大多数の人ができるようになった。それによってどうなったか。生活の質の向上、仕事の効率化、経済の発展。様々な効果があったはずです。

つまり、国民が教育を受けるのは、国のためになる、と考えられるのではないでしょうか。

我が国の教育行財政について」 p2(画像3枚目)
教育再生実行会議 第3分科会(第1回)配布資料 平成26年10月15日
文部科学省

 

でも、上の表を見る限り、日本は他の国に比べて、国民の教育にあまり積極的に投資してないですね、、、。自分でなんとかしてね。というとこでしょう。もっと突っ込みたいところですが、もう十分長いので、ここらで切りましょう。でも、この考え方(教育は国か自己責任か)について、面白い視点が書いてあったので、言葉だけご紹介。

選別主義と普遍主義 (p212〜215、『「奨学金」地獄』岩重佳治)

興味ある方は読んでみてください。

 

 

で、結局、どうすればいいの?勝手にまとめ。

だいぶ長くなりましたが、結局いまの状態はすぐには変わらない(髙い学費に有利子奨学金)し、でも時間はどんどん過ぎて行きます。という事で、この状況で今進学を考えている場合はどうすりゃいいの?という事を、私見で勝手にまとめてみました。

 

いま現在、奨学金を借りるか迷っている方へ

 

将来就きたい職業が決まっている場合

あらかじめ考えておきたい点は、その職業の平均給与額です。そもそも給与があまり高くない場合。月々の返済額と初任給とを考慮して、借りる額を決める必要があると思います。そのほかは、

 

進学の理由が明確な場合

まず、奨学金を借りて大学に行きたいと思っている方は、どうして、何のために、大学にいって何をしたいのかをよく考えてください。明確に口頭で説明できますか?もし、はっきり説明できて、意思が固いのであれば、いいと思います。別に理由は、「大金を稼ぎたいから。そのための学歴が欲しい!」で十分です。入学してから目的意識をもって勉強する意思があれば、それでいいと思います。

ただし、必要最低限を借りてください。また、リスクがある事も肝に命じてください。そして、大学は確かに勉強をする場所ですが、多くの友人を作ってください!社会人になって、所属が決まると、新しく会う人は仕事で関わった人が多くなります。そうなると、気兼ねない友人が作りづらくなります。だって、取引先であったり、顧客であったりする可能性だってある訳ですから。という事で、学生時代の友人が、一番なんの気も遣わないで付き合える事が多いです。

 

理由が不明確だけど進学したい場合

一度働いた方がいいと思います。ただし、働く場合も、ただ言われた事をやるだけでなく、「もっと効率的に進めるには?」「もっと生産性をあげるためには?」など、自分なりにできる工夫はないかを常に考えながら取り組んで欲しいです。そして、働きながらやっぱり進学したいと思うのであれば、ある程度お金を貯めて試験を受けるなりすればいいと思います。

私はそうでしたが、学生の時は特に、進む道は1通りしかないように見えました。進学か就職か。合格か不合格か。でも、学校を卒業してフリーターして社会人になって、色々な人と出会うと、進む道は多種多様だと分かりました。大学には私の父親と同じ年の同級生や、高校出てワーホリいって帰ってきたという4~5歳年上の後輩もいます。大学卒業して数年働いてやっぱり看護学校いって看護師になった友人も3人います(今また1人看護学校いってます)。気が付いたらもっかい大学いって弁護士や医者になってた人もいましたが、、、。すごい、、。

とりあえず、進学以外の道も考えてみてはどうでしょうか。ワーホリいって英語勉強してくるとか。借金して進学して、長年借金を返済し続ける事になる、それでも進学する必要はあるのか。そこに疑問がわくのであれば、やめた方がいいと思います。

 

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ちなみに、私は月6万の奨学金を何に使っていたかというと、生活費です。通っていたのは東京私立大学でしたが、寮生活で4.5畳一間、トイレ・お風呂・洗濯機共有で月3万(友人は月3万の風呂なしアパートに住んでました。シャワーは学校のスポーツセンターで使用)。食費は月1.5万(500円/日)。基本移動は自転車。パソコンは4年の時に購入(それまで友人に借りたり、何とか図書館で間に合わせ)。教科書は近所の古本屋を巡ったり、市の図書館で借りたり。休みにはバイトしたり。という生活でした。そうそう、リサイクルショップで炊飯器を1500円で買いました。ドンキホーテで99円の食パンよく買ってたな、、。

 

ついでに、母親としての立場から

いま私は2児の母ですが、母として考えるのは、「子どもが自ら考え、行動するための教育は、いまは結局、親(保護者)がやるしかない。」という事です。

個人主義の社会で、身を守るのは自分でしかない。自分で身を守る力を身に付けるために、子どもたちには様々な知識を得させる必要がある。と、いうことですが、一方で、他人に対する優しさも持っていて欲しいです。日本にだけいたら分からない事、気づけない事、たくさんあります。格差が広がっていくなか、自己責任論が多く謳われていますが、そうではない視点を持ち合わせられる、広い視野を持った大人になって欲しいです。

そのために、様々な体験をし、様々な人・考え方に触れる機会を作る。お金をかける事が必要なのではなく、機会を準備する。そんな事ができればと考えています。

 

もう一言だけ

これまで、いろいろ徒然と書いていましたが、大卒と高卒の2つを比較するような記事になってしまいました。そこで、ちょっと一言、追加で書いて置きたいことがあります。

社会人になって、色々な人と働く機会がありました。大卒の人、短大の人、専門卒の人、高卒の人。出身学校でいうと、東大、京大、上智、慶応、早稲田、ハーバード、ICU(最近はやりですね)、明大や東海大や法政大に北大、立命館などなど。順不同。

では。果たして有名大学の人はみんな本当に賢く、ミスなくスムーズに何でも仕事が進められるのでしょうか

それは、結局のところ、人によります

 

賢い人は賢いし、そうでない人はそれなりに

確かに、東大京大は、もう入学時点で試験というフィルターを通っているので、頭良い人ばかりです。でも、じゃあ仕事ができるかというと、それは違います。

一緒に働いていて、よく気が付く人、細かな配慮ができる人、責任感持って取り組める人。何事にもやる気をもって前向きに頑張れる人。こういった、知識ではなく、人格面は、学歴では測れないものだと思います。そして、一緒に働きたいと思う人は、よく考える人です。一度失敗したら、次は同じ失敗をしないために、何をすれば良いのか。改善策を考える。または、課題があって、その課題を解決するためにどんな手法があるのか、よく考え、1つ目がダメだったら2つ目に挑戦する。

そんなスキルは、実践しながらが一番身につきます。

という事で、奨学金を得て進学するにしろ、働く事を選ぶにしろ、何をするにも、常に考える癖をつけてください。今やっている事をもっと効率よくするためには?もっと効果を高めるためには?分からなければ、図書館に行って調べるのがいいです。本を読んでください。ネットで検索もいいけれど、どこの資料か分からない物が多いので、ネットは鵜呑みにしないでくださいね。

そんな、日々を過ごしていけば、学歴とは別の、実践の力がつくと思います。

 

ではでは。長々と、、、、本当に長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました!

 

 

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参考:クローズアップ現代
No.38152016年6月2日(木)放送
“奨学金破産”の衝撃 若者が… 家族が…
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3815/1.html

参考:こんな人もいます↓
奨学金が返済できない!若者の返済滞納は甘え?経験者が語ってみる

参考:データでみる就活 朝日新聞デジタル
※1984〜2014の就活の歴史をデータを通して見られます。わかりやすい。

 - その他の本, ふと思うこと