親の厳しさが子どものウソを生む『わが子の気持ちがわからなくなる前に読む本』小林絢子著

      2017/06/19

ウソをつく事を怖がる子どもたち

こんにちは。6才花子と3才太郎の母、mosakiです。娘花子は最近6才になりましたが、5才半ばの時、突然「ウソ」について敏感になった時がありました。「ウソ」をついてはいけない。「ウソ」は悪い事なんだ。と、何かのキッカケがあったのか分かりませんが、突然それまでについた、たわいもないウソを告白してくれる時期がありました。

 

例えばこんなこと。

  • 幼稚園の花壇のお花をひとつ、取ってしまった。それを同級生に見つかって注意されて、「とってないよ!!」とお花を隠してウソをついてしまった。お花、とっちゃいけないのに、ウソもついたし、、どうしよう、、。
  • 幼稚園のクッキングの時間でカレーを作ったとき、じゃがいもと人参と玉ねぎを切らなきゃいけなかったけど、玉ねぎを切って涙を流している人を見て玉ねぎを切るのが怖くなった。それで先生が「玉ねぎ切ろうか」と言ってくれたけど、「もうたくさん切ったからいいの。」と断ってしまった。本当は切らなきゃいけなかったのに、、、!(これ、ウソじゃないけど、娘本人はウソと同列に扱ってた)
  • 友達が家に遊びにきた時に、部屋で隠れて遊んでいて、おばあちゃんに「おままごとしてるの?」と聞かれて、「そうだよ!!」と答えた。本当はおままごとじゃなかったの、、、ウソついたの、、!!おばあちゃんに謝った方がいいかな、、。

などなど、こんな感じの、本人以外は多分もう忘れているであろう、小さな事です。でも、本人は何日たっても、時には数ヶ月前のことまで思い出しては悩んでいました。

なんで、突然思い出したんだろう??しかも超ちっちゃいウソだし!!と思いましたが、まぁ、本人がすごく気に病んでいるので、「分かった。そんな事があったんだね。じゃあ、お母さんが一緒に謝ってあげるから、花子も一緒に謝ろうか。」と言って翌日には関係者に謝りに行きました。

 

小さい子どもにとって、「ウソをつく」という事には、どんなイメージがあるのでしょう。何がどうして、そんなに夜も眠れなくなるくらい、突然悩みだしたのでしょう。エンマ様に舌を抜かれる?誰かにこっぴどく怒られる?または叩かれる?

よく分からないので、娘本人に聞いてみました。

「ねえ、ウソついたらどうなると思う?」

 

そしたら、意外な答えが。

 

分からない、、、花子どうなるの??? 花子こわい、、、どうしよう、、!!涙」

 

えー!!!そんな感じだったの???そうか、どうなるか分からないから無性に怖いわけね。と、納得です。

 

子どもは身を守るためにウソをつく

さて。ここで。最近読んだ本の一節がすごく胸に残ったので、メモ。

 

第1章 親から見えない子どもたちの気持ち
親の厳しさが子どものウソを生む

なぜ患者さんはウソをつくのでしょう。それは自分を守るためです。医者や家族からしかられると思うからです
患者さんがウソをつくという状況は、医者と患者の間に上下関係があり、医者が一方的に患者を指導し、相手の立場で考えようとしないときに起こります。「飲み忘れてはいけません」と指導することは、医者として正しい行いです。しかし上下関係があるかぎり、強い立場にある者が正論を通すという振る舞いは、弱い立場にある者を裁き、しかることにもなります。(p16)

薬は飲み忘れるものだという前提で治療にあたるのです。そして、どれだけ飲み忘れてがあるか、なぜ忘れるか、いつ忘れるかを一緒に考えると、患者はウソをつく必要がなくなります。(略)それぞれに、なるほどと思える理由や事情があり、こちらがそれを受け入れる(略)治療とは、信頼関係に立った医者と患者の共同作業であると思います(p17-18)

親子関係も同じ。強い立場にある親が、一方的に厳しく口やかましくしつければ、子どもは自分の身を守るためにウソをついてしまいます。それに対して親は、自分がその原因をつくっておきながら、「ウソは泥棒の始まり」などと責めるのです
一方的な厳しいしつけで子どもを裁いていないでしょうか。子どもがウソをつかなくてもいい土壌をつくっているでしょうか。
それを、もうひとつ。子どもにとってウソをは自分を守るための知恵であり、そういう秘密を持つことも確かな成長のひとつの過程なのです。(p18)

 

ウソをついた事がない人いますか?私はもちろん、あります。親にこっぴどく叱られました。お尻叩きも覚えてます。あれは痛かった。。。でも、そもそもの原因は私にあると分かっていました。悪い事をしたんだから、叱られても仕方ないなと思えたし、「ごめんなさい」と謝る事もできました。

では、この本の場合はどうでしょう。「叱られると思うから」ウソをつく。「自分の身を守るために」ウソをつく。

 

大人も身を守るためにウソをつく(時には沈黙)

こんな状況、身に覚えがある人はいますか?私はあります。

昔、小さい会社に勤めていた時。上司がいつも怒っていました。いつも忙しい会社だったし、私の能力不足もあり、なんでも怒ってました。たぶん、他の人には怒れない人だったので、怒りやすい私に他の人の分も怒ってたんでしょう(後で教えてくれました。)

そんな時は、「どうしてこんな事になったのか、説明して。最後まで聞くから!」と言われますが、結局、私が説明し終わる前に、「じゃあどうして相談しなかったんだよ!!」(いや、聞いてくれなかったじゃん、、、)「なんでこうしなかったんだよ!!」(いや、、相談してその時こうしろって言った事したんだけど、、、)「そもそも云々かんぬん」(もういいや、、、黙ってた方が早く終わるし、、、。とりあえず「はい」だけ言っとけばいいや、、、)

 

「身を守るためにウソをつく」という事例とは多少異なりますが、何を言ってもどうせ叱られるだけだから、もう黙っていよう。という、この硬直した状態は、非常に似ています。

結局、その上司は「理由を聞くから」といっても聞かなかった訳です。本人はもしかして聞いているつもりだったかもしれませんが、私の立場で物事を考えてくれなかった。何を言っても「言い訳するな」という態度で、それであれば私も「何を言っても言い訳と言われるから、何も言わない方がいい。黙ってる」となった訳です。

 

ウソをつかなくてもいい信頼関係を

「身を守るためのウソ」「身を守るための沈黙」このような状況は、上下関係がある状態でよく起こることではないでしょうか。上司と部下、医者と患者、教師や生徒、親と子どもなど。

 

「ウソ」はどうしてつくのでしょう。特に子どもの場合は、何か間違えたことを隠すための事が多いです。「手を洗うのを忘れた」「友達を押して倒してしまった」「おもちゃをとった」「石を投げたら誰かにあたった」「夢中になって遊んだら大切な資料に落書きした」「忘れ物をした」などなど。

叱ることは簡単です。「なんでそんな事したの!!!」と言えばいいんです。

 

でも、本人だって分からない事がたくさんあります。私だって出来ないことはたくさんあります。忘れ物するし、人の名前覚えられないし、コーヒーこぼすし。ついお菓子食べ過ぎたりとか。やっぱり朝早く起きられないとか。机の上が汚いとか。

 

これを叱られたらどうしましょう。「なんでコーヒーこぼすんだよ!!」とか言われたら。「ちょっと石につまずいて。。。」とか言っちゃうかも?もしくは、それが何度も続いたら「ごめんなさい」だけですね。もう何も言えない。言いたくない。どうせ叱られるし。しまいには、「私がバカだからです」とか言って、これ以上何も言わないで欲しいオーラを出すとか。

 

子どもは大人に叱られるのを怖がっています。自分よりもとても大きい人に叱られる。これは怖いです。その恐怖から逃げるために、ウソをつく。防衛本能ですね。

 

人間は間違えます。大人になっても。ウソもつきます。子どもじゃなくとも。

間違えるのはいくつになっても仕方ないけど、できるなら、自分を守る為のウソをつかなくてもいい環境を、整えてあげたいです。

なにか間違えたら、ウソをついて隠すのではなく、ちゃんと親や先生などに話せる、しっかりした信頼関係を。そして、子どもがちゃんと話せたら、「よく教えてくれたね。」と、まずは認めてあげられる広い心を持った親になれるように。がんばります。

 

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この本は、他にもいろいろな点を気づかせてくれました。精神科医の方が書いているので、実際の現場の事例が豊富に紹介されていて、イメージしやすく、またポイントが理解しやすかったです。もともと、新聞の連載だったこともあり、1つ1つの話が短く読みやすいです。
わが子の気持ちがわからなくなる」わけでなくとも、子育て中はどんな事が起こり得るか知るためにも、非常にためになる1冊だと思います。

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