はじまりは小さなことだった。ケンカのはじまりとその結果。本当はどうすればよかったんだろう?『おひさまとおつきさまのけんか(せなけいこ)』より

      2017/05/30


私が大好きな「せなけいこ」さんの絵本です。ちょっと興味を引く『おひさまとおつきさまのけんか』というタイトル。黒の背景に、赤いおひさまと黄色いおつきさまという、なんともビビッドな表紙が目を引き、ちょっと読んでみました。さて、その内容は。

おひさまとおつきさまのけんか
[ せなけいこ ]

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簡単に内容をまとめると(せなさん勝手にごめんなさい)

※ネタバレあります。内容の詳細を知りたくない方はここを飛ばしてください。

簡単に言うと、仕事に遅刻したおつきさまに、おひさまが激怒。そのあまりの怒りっぷりに、おつきさまもムカッ!! そしてお互いその怒りがどんどんエスカレートして、最後は雲と星を巻き込んだ大ゲンカになります。そうなると、もう宇宙大戦争です。誰も逃げ場がありません。大ゲンカが終わったあとに残ったのは、、、。怖々と行方を見守っていたであろうネズミたちでした。おひさまもおつきさまも無く、暗闇に残された小さな生き物は、泣くことしかできなかったのです。

そして最後に、男の子が考えます。「これはどこか遠いよその国で起こったお話。だけど、それはほんとうかな?」って。

 

私の第一印象。大人の感想。

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初めて読んだ時は、内容にかなり衝撃を受けました。えええ!!これって、戦争の話だったの??知らなかった!!そして最後は地球滅亡状態、、、。しかも、太陽と月で戦争なんて、核戦争のイメージ???など、どんどん疑問が膨らみます。でも、複雑な話ではないので、「戦のはじまりは小さなことだった」という点と、「戦争はこんなに酷い結果をもたらす」という2点を理解するには、とてもわかりやすい本だと思います。また、「どこにも正義はない」という点も十分伝わってきます。

ただ、戦争ってそんな単純な話ではない、という思いがあるのも確か。どこかに利権者がいて、被害者がいて、加害者がいて、単純に正義のぶつかり合いではないし、なんだかんだ、云々、、、と色々考えだすときりがありません。

そうすると、今度は戦争について調べ始めたりします。例えば、こんな記事とか。

戦争とは何なのか? 焼け跡世代からのメッセージ」( 養老孟司/President Online)

戦争」(wikipedia)
戦争(せんそう)とは、おもに内政問題あるいは外交問題の武力解決であり、国家による政治の一手段である。広義には内戦や反乱も含む(戦争一覧)。

軍事入門/戦争とは何か」(wikibooks)
戦争(War)は一般的には武力を行使する行為、またはそれによって引き起こされる状態であると考えられている。(一部抜粋)

調べればたくさん出てくるし、歴史社会に疎い私は、調べれば調べるほど頭がパンクしそうです。で、結局、「戦争ってなんだろう?」という疑問に戻るわけです。

 

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ここに書いたのは、私がこの本を読んだ時の感想ですが、大抵の人は同じような印象を持つのではないでしょうか。

「戦争って、なんだろう?」

深みにハマろうと思えば、どっぷりハマれる内容です。

 

では、子どもの反応は?

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私がうーんうーん。と悶々と考えている横で、子どもたちは?というと、食い入るようにして本に見入ってました。そして、「もう一回読んで!!」と、かなり気に入った様子です。

ここが子どもの不思議なところ。

これ、おもしろいね〜!!」だそうです。

しまいには5歳の娘が、弟に「ぺっ!」と、おひさまがおつきさまにつばを吐くところを真似しちゃったりして、、、。
「汚いからだめだよ!!」ていうか、そもそも「それ超失礼だから絶対やっちゃだめだよ!!!」と、そんなところから説明が必要なんですが、これが、子どもたちの素直な反応なんだなと思います。

今まで見たこともないスケールの大ゲンカ。お空で、おひさまとおつきさまがケンカしてる。そして2人ともいなくなっちゃった。なんてすごいんだろう!!おもしろい!!わくわく!!

特に、5才の娘よりも、2才の男の子の方がこの本を気に入ってました。昨日も、「ママ。図書館いこー。あのおひさまの本かりよーよー。」とピンポイントでリクエストです。「え?あの本そんなに好きだったの?」というと、「うん!!早くいこ!!」とワクワクしてるのが伝わってきます。

 

 

深読みしすぎる大人たち(私だけかも)

『おひさまとおつきさまのけんか』のレビューを見ていると、「子どもにこんな戦争の本を読むのはまだ早いし、私は読みたくありません」という声もありました。また、「子どもが戦争について知るのに、とても分かりやすくていいと思います」という声も多数ありました。どちらにしても、「戦争を理解するための本」というラベルが貼られているわけです。

が、子どもの反応を見ていて、ふと、「これって、別に戦争の事考えなくてもいいんじゃないかな」と思いました。

単に私が「戦争の話」「特に核戦争か??」「確かにこの子たちの時代には起こりうるかも、、、」「うーん云々」と考えているだけで、子どもにとっては、「おひさまとおつきさまの大ゲンカの話」であって、それ以上でもそれ以下でもありません。もしかしたら、もはや「戦争とは」という視点でしか見ていないので、本当は他にもっと気づける点があるのに、気付いてないのかもしれません。

 

じゃあどうすれば良かったと思う?の子どもたちの答え

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ちなみに、子どもたちに「ねぇねぇ、じゃあどうすればよかったと思う?」というと、「おひさまは怒りすぎだし、おつきさまはちゃんと謝ってないからダメ!!」と、ごもっともな回答を頂きました。大人になるにつれ、その簡単な一言が言えなくなってしまうんでしょう。

「子どもは許す天才」という言葉が一時期流行っていましたが、ダメダメな母親の私を、子どもたちはいつも「ママ、いいよ。」と許してくれます。その一方で「なんで怒ってるの?」とも牽制されます。そんな素直な心と行動を、大人になってもしっかり持ち続けられたら。

心ではわかっているのに、謝れないなんて、そんなプライド捨ててしまうべきです。自分から気持ちを見せないと、相手からも本当の気持ちを引き出せないかもしれません。そもそも、「悪い事したら、ちゃんと謝らなきゃいけないでしょ!」と言ってる大人が謝れないなんて、恥ずかしいです。

 

と、いうことで、どうするか。というのは、「2人ともあやまるべし」でした。

そうですね。始まりは小さなことだったし、解決方法も簡単なことだったんだよね。

※ここでは、「子どもは許す天才」という言葉は、「子どもはなんでも親のする事を許すべきだ」という意味は含めずに使っています。場合によっては、子どもは親を許す必要はないかもしれません。

 

 

 

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