子どもの心を癒す、困った行動を治す、挑戦する心を育みたいときに〜『お話で育む子どもの心』

      2017/05/30


 

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はじめに:私が絵本に助けられた体験談

娘がまだ2才の時、突然、お風呂に入るのを嫌がるようになりました。それまでは楽しそうに浸かっていたのに、その日から急に「入らない!いや!!」湯船に入るのを拒むようになったのです。何日か「あれー?どうしたんだろ??」と思っていましたが、ふと、その頃読んでいた「ごくらくももんちゃん」のキャラクターを使って話しかけてみる事にしました。

 

「きんぎょさんがやってきました。 ちゃぽちゃぽちゃぽ。 ちゃぽちゃぽちゃぽん。はい。しつれいしますよ。あ〜、ごくらくごくらく。」

「つぎに、さぼてんさんがやってきました。 ちくちくちくり。ちくちくちくり。はい、しつれいしますよ。あ〜ごくらくごくらく。」

「あれ?XXちゃんは入らないの?もうきんぎょさんも サボテンさんもお風呂に入ってるよ?」

すると、なんと、その場ですぐに!「XXも入る!!」と娘が湯船に入りました!おどろき桃の木さんしょの木。なんてこったいこれだけで!!
と、その時は思ったのですが、その後、子どもが絵本や物語から受ける影響力の強さを見ると、ああ、あれはこの『お話で育む子どもの心』で紹介されている、お話の持つ力の体験そのものだったんだなと思います(結局、湯船を突然嫌がった理由は不明のままでしたが)。

 

 

お話はなぜ子どもに多大な影響力を与えるのか

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みなさんは本は好きですか?私は小さい頃から本が大好きで、いつも本を読んでばかりでした。私の親は今思えば、ちょっと厳しい部類だったと思います。ゲームはなし。テレビは1日1時間。1日お小遣いは50円(家におやつは基本置いていないので、お小遣いで自分でおやつを調達します)。おもちゃも家にたくさんある訳ではない。よって、私の場合は本を読むのが遊びの主流になりました。公園で遊ぶのも楽しいけど、家にいる時はちょくちょく本を読んでいた気がします。学校や市立の図書館にもよくいっていました。

で、じゃあ、その読書が何の役に立ったかというと。

正直、明確にはわかりません。でも、誰かと喧嘩した時、何かうまく行かなかった時、嬉しい時や寂しい時、たいていの場合は読書すると気持ちが落ち着いていたような気がします。語彙が増えたとか、他の人よりも知ってる漢字が多いとか、そんなのは大した効果じゃありません。それよりも、良かったのは「集中力がつく」点と、「気持ちを落ち着かせる方法を知る」点ではないでしょうか。

 

子どもにとってのお話とは

この点については、本の中でわかりやすく書かれていました。

なぜ物語やおとぎ話は、こんなにも子どもたちの心にまっずくに届くのでしょうか?(略)子どもたちは、夢の世界と現実の世界のはざまに生きているので、物質的世界の「現実」と、夢の世界の「現実」とを、両方とも理解できるのです。そして、この2つのまったく違う世界をつなぐ懸け橋が、「想像力」なのです。(略)

子どもたちにとって、空想の世界・夢の世界は、大人の住む日常的・物質的な世界と同じくらい現実的なのでしょう。子どもたちは、この2つの世界を、蝶のように自由に行ったり来たりすることができるのです。

p18-19 『お話で育む子どもの心: お話は子どもの気持ちを知っている。

 

なんか、ここらへんはシュタイナーの考え方と同じですね。というか、スーザン・ペロー氏はシュタイナー関係の学校で先生をしたこともあるらしいので、シュタイナー思想の影響もあるのでしょう。

上記の引用を言い換えると、子どもは夢の世界を現実世界と同じように捉えているので、大人にとってはフィクションの「お話」も、子どもにとっては身近なニュースを聞くのと同じくらい現実の話と捉えられる。

よって、ペンの蓋をなくした子どもに、「どうするの!!ここからインクが流れ出して洪水になって、おうちが水浸しになるでしょ!!」と言ったら、それを本当と捉える場合があるし、白黒の牛からは「白い牛乳」が出て、茶色い牛からは「コーヒー牛乳」が出るというと、それを本当と捉える事がある。という事です。(ちょっと雑な例えですが、実際にあった話)

 

お話は子どもの心に直接とどくからこそ、効果も高い

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絵本やテレビの話を、自分流にアレンジして遊んでいる子どもたち、よく見かけますね。アリエルごっこやプリンセスごっこ。海賊ごっこに戦隊モノごっこ。ここら辺は、子どもたちの行動を変えるために作られた話ではないですし、子どもたちも絵本やテレビの要素を模倣して遊んでいるだけです。

でも、これが、例えば。

  • 子どもが靴をそろえない。何度言っても聞かない。そもそも耳にも入っていないのか、すぐ忘れる。なんとか、靴をそろえさせる方法はないだろうか。
  • 友達と遊びたいのに、恥ずかしくて声をかけられない。一人でいて、寂しそうなのに、どうしても自分から動けずに、親の影に隠れている。そんな子どもに自信をつけさせたい
  • 身近な人が突然亡くなってしまった。どうしてもその悲しみから抜け出せなくていつもじっと伏せっている。その悲しみをなんとか和らげてあげたい

そんな子どもたちの、行動や意識を変える、悲しい心を癒すことを目的として作られた話だったら?どうなるでしょうか。

この本は、「困った行動」「つらい状況」「不安をもつ状況」にある子ども達の心に寄り添い、その心を優しく癒し励ますことを目的としています。その方法として、「お話」を使うのです。

 

『お話で育む子どもの心』の内容

『お話は子どもの気持ちを知っている お話で育む子どもの心』
スーザン・ペロー著
東京書籍株式会社
2013年8月6日
Amazon 楽天ブックス

 

目次

  • はじめに 世界は物語で成り立っている。スーザン・ペロー(ストーリードクター)
  • 本書の楽しみ方と使いかた
  • 監修の言葉 子どもたちの可能性を広げ、大人を癒す 尾木直樹(教育評論家)
  • 第1章:なぜお話が「心に効く」の?〜大人のためのやさしいお話心理学
  • 第2章:「困った行動」を調和へ導いてくれるお話〜「困った子」てよばないで
  • 第3章:「新しい経験」へのチャレンジを助けてくれるお話〜子どもだってがんばってるの
  • 第4章:悲しみと不安を癒してくれるお話〜つらいできごとをのりこえて

 

第1章:「大人自身の振り返りが必要」という内容

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お話は子どもの行動や思考、心に大きな影響力をもつ。よって、お話を使って子どもの行動・思考を端正したり、心を癒したりできる。というのは、ここまででよく分かりました。が、一方で、著者は前提として、大人の考え方や物事の捉え方も、よく考える必要があると説いています。

それは、第1章で詳しく説明がありました。特に、第1章 3「困った行動」はどうして起こる? で、

  • 何が「普通」で何が「困った行動」なのかの見極めの必要性。年齢、発達段階に応じて「普通」は変わること。例)2歳児が癇癪を起こす。3歳児が保育園のおもちゃを持って帰ってくるなど。
  • 「困った行動」には必ず原因がある事。その原因を考えないまま、その子に「困った子」というレッテルを貼らないこと!
  • 大人自身、子どもの手本になる行動ができているか。子どもに無理を言っていないか、を振り返ること。
  • 子どもの行動を「良い」「悪い」「適切」「不適切」と判断するのは、とても主観的な基準からだということを意識すること。

 

大人の行動チェックリストなどもあるので、自分自身の行動を振り返るのに役立ちます。

 

第2〜4章:事例ごとのお話が紹介されている

目次にあるとおり、お話を必要としてるこどもたちの、ケースバイケースで、色々なお話が紹介されています。

  • じっとしてられない子、うそつく子、やだやだの子、欲張りの子、じっとできない子。(第2章)
  • 怖い夢を見て不安な子、赤ちゃんが生まれる子、引越しする子、生活習慣がまだ身についてない子など(第3章)
  • 身近な人とお別れした子、災害にあった子、病気や離婚などつらい出来事があった子など(第4章)

 

ちょっと残念な点

この本を読んですぐは、正直、ここで言われる「お話」の効果がよく分かりませんでした。娘がお風呂に入れるようになった体験は、お話が役立った話としてすごく理解できます。でも、そのほかは?子どもが靴をそろえられるようになった、お手伝いできるようになった。すごい!!へー!!ふーん。さすがー。。で、じゃあ実際にやろうとするかというと、私の場合はそこまで困っている事もないので、「お話の力」をあまり理解できてなかったと思います。

 

でも、サイトでスーザン・ペローさんについて調べていて、とあるブログを見つけました。そのブログには、著者の講義に参加したこと、その中で印象的だった話として。

話のまとめ ※詳細は本文を読んでみてください。

  • 南アフリカの6歳の男の子。
  • 4歳の時にナニーに性暴力をうけた。
  • 6歳の今でもトイレに1人でいけない。痛みもある。
  • その男の子に、「Born to be King」(王様になるために生まれて来た)という話を聞かせた
  • トイレに1人で行けるようになった

「お話で育む子どもの心」by Susan Perrow(May 01, 2015)

というものがありました。

本自体には、たしかに、こんな事例がこう解決しました!!という話がいくつかありますが、こっちのブログの事例の方が、強烈なインパクトでした。この話の方が、「ああ、お話の持つ力って、本当にすごいんだ。。。」と思ます。ということで、もっとお話の持つ力について、身近なものだけでなく、強烈な具体的事例があれば、もっと力の強さを感じられたなーというのが感想です。

 

 

おわりに、一部抜粋

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知識よりも想像的思考力を重視する点について

「想像力は進歩を生む。偉大な発明は、想像力豊かな心から生まれるのだ」と、アインシュタインは言っているのです。(p15)

 

 

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