子育ては試行錯誤。間違えても再挑戦の繰り返し〜『「気になる子」「苦しんでいる子」の育て方』より

      2017/05/30


この本は、小学校の教員の方が書いた教員の方向けの本だけど、なんとなく気になって手にとってみました。別に私はクラスを受け持ったりする訳じゃないのですが、母親として、子どもと接する時のヒントになるかなという目線で読んだので、その感想をつらつらと書いてみようと思います。

 

はじめに、胸が苦しかった事例をさっそく紹介

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まずはじめに、一番心に突き刺さった部分。

この日、朝から隣のクラスの子の大きな問題があり、なんだかイライラしていた。
そんな日の六時間目、(略)男子数人が遅れて帰ってきた。
「なんで遅くなったん?」と冷静に尋ねるべきなのに、イライラに支配されてしまっていた僕は、「遅すぎるやろ!」といきなり言ってしまった。
子どもが自分の考えを「いや、だって・・・」と言い始めた瞬間、なぜかかぶせるように説教を始めてしまった。(略)

腹を立てながら、もう一人の自分が、「あかん、謝らなあかん。僕、子どもの声に耳傾けてない。(略)」と思っていたが、なぜか、すぐには謝れなかった。でもその夕方、帰りの「さようなら」をする時になってやって、「みんなごめん。感情的になってしまった。高圧的になってしまった」と謝ることができた。(略)

この一件で、僕は自分の中にあるいやらしくて高圧的な部分をすごく感じた
「従え!」「思い通りに!」。場面によっては、そのような傲慢な気持ちが大きく出てきてしまうことがある。じつは、そうしたことは今までにも感じていたのだけれど、この日は、明確に感じた。そして、「僕はこの日を境に変わるなぁ」となんとなく確信した。(略)

自分の中で、言葉にできない何かが大きく変わった。子どもが、僕に教えてくれたのだと思う。

あとがき p188-199

『一人ひとりの凹凸に寄り添う 「気になる子」「苦しんでいる子」の育て方』
2016年3月5日 金大竜著 小学館

 

この本の中には、いろいろな事例や、その時著者が行った解決方法が紹介されています。子どもと向き合うためのポイントや、注意点など、実際に教師をしている方でしか知り得ない生の生徒の声がたくさん紹介されています。

でも、私がこの「あとがき」にぐさっと胸をえぐられたのは、私自身同じ思い、「従え!」「思い通りに!」というこの部分を、私も持っているんだと実感したからです。本当に叱る必要がある時は勿論あります。でも、本当は、そんなに怒ることではないし、もっと子どもの考えてる事を聞いてあげてもいいという場面もあります。そんな時は、私は「お母さんの言う事聞いてよ!!」と、とりあえず、「言う事を聞かせる」「自分の言う通りにさせる」事が目的になっているのというのを、この部分を読んで眼前に突き付けられました。と、同時に、胸が苦しくなって、子どもたちに対して「ごめんよー」という思いが湧いてきました。

 

事例としては、まだ軽いものですが、思いつくのは以下のような事。2歳児坊主はまだあまり怒る対象にならないので、特に5歳児娘に怒りが爆発しがち。

  • 朝眠そうでまだぼーっとしている娘に「早く着替えてよ!」「ごはん食べないで幼稚園行くの!?」「てかもう食べなくていいよ!!」と怒る
  • 習い事の練習をなかなか始めない娘に、「やる気ないならやらなくていいよ!」「お母さんの時間無駄にしないで!」と怒鳴る
  • なかなか寝ない時に、「てか、もう1人で寝てよ!お母さんやる事いっぱいあるんだから!」と無下に扱う

思い出すと色々あります。いや、もちろん、毎日怒鳴りまくっている訳ではないですが、でもそれでも、1日に1回は大きな声で怒っていると思います。でも本当は、そんな状態になるきっかけや環境があるんだと心の中では思っているんです。朝起きられないのは、早く寝てないから。早寝早起きの習慣をつけられてないのは、私が夜型で朝遅いから。習い事の練習を始めないのは、私に甘えたいから。もっと「一緒にやろうよー。」と声をかけて欲しくて、構って欲しいから。なかなか寝ないのも、弟が寝て1人で甘えられる時間は今だけだと分かってるから。

 

この本で徹頭徹尾、訴えかけられること

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「子どもの声に耳を傾ける」重要性に、この本では嫌という程向き合わされます。

本当は、言いたいことがたくさんある。でもうまく言えない。もしくは、大人が聞いていない。もしくは、大人が聞き方を知らない。

本当は、もっと伸びる方法がある。でも、その方法が分からなくて、子ども自身苦しんでいる。そして、大人もそんな子どものフォローの仕方が分からず悩んでいるか、もしくは問題児だとみなしてフォローの必要性を感じていない。

そして、知らない間に傷ついている子どもたちがいる。

 

著者は、子どもと向き合うのがとても上手です。そして、自ら謝る事ができる貴重な先生だと思います。

 

謝れるかどうかは、人との信頼関係を築く上で必須条件

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このポイントは、特別本に記載されている点ではありませんが、私が読んでいて感じたものです。

自分の体験から考えると、先生が生徒に謝る、または謝ることができる先生は、どのくらいいたでしょうか。または、果たして全員が子どもと真剣に向き合っていたのでしょうか。私の小中学校時代を思い出すと、教師の人みんながみんな、真摯に向き合ってくれたとはあまり思えません。中には誤魔化す人もいました。そう感じるポイントは、授業が分かり易いとかいう点ではなく、「自分を正当化しようとするかどうか」という点です。もっと簡単に言うと、間違えた時に言い訳するか、ちゃんと謝るか。という点です。

子どもはその点を敏感に感じ取ります。

子どもは自分の考えをしっかり持っています。幼稚園児でも、2歳児でも、自分の考えがしっかりあります。ただ、その伝え方を知りません。語彙もまだ少ないし、抽象的な概念を表す言葉なんてまだあまり知りません。言葉を知らないということは、まだ考え方も上手にまとめられないという事です。だから、癇癪を起こしたり、大声で泣いたり、イライラしたりしてます。その部分を、大人になって語彙も増えて抽象的な概念もだいぶ分かるようになった私が、フォローしてあげられたら、子どもも楽になるんじゃないかなーと。わが子2人を見ながらぼんやり考えたりしてますが、そんな2人も、大人の誤魔化しには敏感です。そして、誤魔化しはいつかばれるし、ばれたら信頼関係が揺らぎます。

親子でなく他人ならなおさら。

 

真剣に向き合うと、やっぱり衝突するし、喧嘩もする。でも、そんな時に自分を正当化しないで、悪かったことは悪かった、ごめんなさいとい言えれば、信頼関係もより一層深まると思います。

 

 

「気になる子」「苦しんでいる子」は普通の子

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本のタイトルにある、「気になる子」「苦しんでいる子」にはは、それぞれなんらかの環境要因がある事が多いです。疾患の場合もあります。「忘れ物の多い子」「宿題を忘れてくる子」「遅刻の多い子」や「言葉遣いの良くない子」。一見、行為だけを見て子どもを叱ってしまいがちですが、その背景、家庭環境、または疾患の可能性を含め、全体の考慮ができる、広い視点で子どもを見ていきたいと思いました。

本の対象は教員メインですが、子どもと接する際の基本は親も同じです。

自分の子どもだからなおさら叱りやすくて叱っちゃう事もありますが、その行為、その原因となる要因を考え、一緒に解決策を構築・実践できる親になれればいいなーと思いました。

ちなみに、小学校時代の私は、軽い問題児だったと思います。はは、、、。

 

凹凸を生かす教室、目次

「凹凸を生かす教室」のところでは、自閉症スペクトラム、ディスレクシア、ディスカリキュリア、場面緘黙(ばめんかんもく)症、についての実体験が紹介されていました。症状については聞いたことがありますが、実例を読むのは初めてで、参考になりました。

理論や方法論も必要ですが、この本は実践本です。実際のクラスで何が起こっているか、どうやって先生と生徒はクラスの問題を乗り越えていったか、生の声が満載です。教員の方だけでなく、子どもと触れ合う機会のある方は、ためになる本だと思います。

目次

第1章:「わからない」から始める子ども理解
第2章:家庭に「しんどさ」を抱える子ども達
第3章:一人ひとりの凹凸を生かす教室
第4章:苦しんでいる子ども達に寄り添う

 

 

最後にもう一箇所。「教師」を「親」に変えて読んでみてください。

教師のものの見方や考え方は、絶対ではありません。間違っているかもしれません。間違いかもしれない可能性も感じながら、それでも、目の前の子どもに合わせて、最善の方法をとっていく。それが何より大事です。

自分のやっていること、考えていることが絶対ではないという感覚が、教師としてやっていく上で忘れてはならない、最も大事な感覚だと僕は思っています。(p14)

 

親のいうことは絶対ではないし、親も間違えるんだという感覚が、育児をする上で大切な感覚だな。ということで。

 

おわり。

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