モンスターペアレントとは。付き合い方、対処方法など考察~『モンスターペアレントの正体』より

      2017/05/30


モンスターペアレントと呼ばれる人たちの心理状況や行動、その実例や対策方法に興味があって、この本『モンスターペアレンツの正体』を手にとってみました。私自身が困った状況にあるわけではありませんが、今後の参考として知っておきたいと思ったからです。

 

かなりインパクトのあるこの表紙。なんとなく図書館で興味があって手に取ったものの、このいかにも「何に対しても文句があります」「世の中全てが不満です」という顔。この顔が結局は「モンスターペアレンツ」の全てを表していました。

  • 序章:モンスターはある日突然やってくる
  • 第1章:モンスターペアレントに振り回される学校
  • 第2章:保護者の側の苦悩
  • 第3章:学校と保護者の影響に疲弊する子どもたち
  • 第4章:何故モンスターペアレントが生まれたのか
  • 第5章:病的なモンスターペアレントへの対応
  • 第6章:モンスターペアレントを生み出さないために

モンスターペアレントの正体―クレーマー化する親たち (シリーズCura)
山脇由貴子著
2008年3月20日発行
中央法規出版株式会社発行

 

発行が2008年なので、もう8年も前の(2016年現在)本ですが、定義はこの内容と変わっていないし、対策方法もより確実なものとして定着してきているのではと感じています。(あくまで個人的に)

 

はじめに、モンスターペアレントとは

今ではよく聞く「モンスターペアレント」という言葉ですが、その明確な定義はなんでしょうか。単なるクレーマーであれば、モンスターではないですね。それに、クレームといっても、人によっては内容が単なる要求と捉えられる場合もあると思います。じゃあ、モンスターとまで言われる要素とは?

 

保護者たちの学校に対する要求(略)の多くは、とても応えることのできない無理難題なのである。そしてこうした無理難題の要求と苦情と繰り返す、学校、教師に対する強烈なクレーマー保護者は、モンスターペアレントと呼ばれるようになってきている。(p34)

そう、つまり、この無理難題がポイントです。

  • 「入学式に桜が咲いてない!!」
  • 「忘れ物がないように毎日電話をしてほしい。いっそ家に着て準備してほしい。」
  • 「うちの子だけクラスで特別対応してほしい。叱らないでほしい」

などなど、今では色々な事例がいたるところにあるようですが、つまりは学校や教師の責任でどうにもできないような要求を執拗にしてくる。という人のことだそうです。

 

『モンスターペアレンツの正体』は「学校」「保護者」「こども」、全体の状況が把握しやすい構成

目次を読むとだいたい内容のイメージは掴めますが、この本でよかったのは、その構成です。

序章:モンスターはある日突然やってくる モンスターペアレントと教師の始まりの物がたり。
第1章:モンスターペアレントに振り回される学校 学校の苦労話。事例紹介。「個人情報」という盾に隠れて、子どもへのアドバイスや指導に必要な家庭の情報が掴めない。適正な指導ができない状況。など。 学校側の状況
第2章:保護者の側の苦悩 保護者と保護者との関係性が希薄。
生活に余裕がない。学校の状況が把握できない。
保護者側の状況
第3章:学校と保護者の影響に疲弊する子どもたち モンスターペアレントと言われる親の子どもは、友達がいなくなる可能性が高い。また、子ども自身モンスターになる可能性も高い。また親の競争意識に振り回されて疲弊していく場合いも。(韓国の受験社会で、子どもの自殺が多い、というニュースを思い出しました) 子ども側の状況
第4章:何故モンスターペアレントが生まれたのか  2種類のモンスターペアレントについて。ある程度言えば伝わる親と、もはや病的で何をいっても伝わらない親。コミュニケーションの減少により
他人との関わりが希薄になる。自分自身を守ることが目的に。
モンスターペアレンツの心理状況
第5章:病的なモンスターペアレントへの対応  一企業のリスクマネジメントと同じ対応が必要。
組織力が試される場。
対策方法
第6章:モンスターペアレントを生み出さないために  苦情の構造を知る。「人生は勝ち負けでない」と知る。 事前対策案

 

ということで、モンスターペアレントに対する情報はこれ一冊でほとんど網羅しているのではないかと思うほど、全体的な視点でまとまっていると思いました。

ちなみに、山脇由貴子さんのプロフィールを読むと

山脇由貴子(やまわき・ゆきこ)
東京都児童相談所・児童心理司
1969年東京生まれ。横浜市立大学心理学専攻卒業。年間100家族以上の相談等を受け持つ。ストリートチルドレンの急増するベトナム政府から依頼を受け、児童相談所のスタッフ養成のための講演を行うなど、国内外を問わず幅広く活躍。また、新聞や雑誌への寄稿を通し、臨床現場の生の声を発信し続ける、今最も注目される若手臨床家。著書に『教室の悪魔』『あの子が部屋から出てこないのはどうしてだろう?』(ともにポプラ社)、『出会いを求める少女たち』(信山社)など多数。

『モンスターペアレンツの正体』プロフィール欄より

とあります。理論だけでなく実践がともなっていて、実際に多くの事例を体験している方でした。

 

心に残ったポイント

  • 教師と親は昔は一緒に子供を育てる相手だった。今は、「先生=給料をもらって仕事をしている人」。イコール、要望を聞き入れるべき相手。という認識になってしまった。
  • 教師は年度途中だともう家庭の状況をしる機会がないので、年度はじめに家庭調査表などを配布し、「学校の方針として提出が決められています」として一斉に情報を集めるべき。

娘の幼稚園も毎年同じ内容の家庭調査票の提出が求められますが、そういう理由だったのか、、、と納得しました。1年間で家庭内が色々変化している場合もありますしね。ちょっと考えればなるほど、、、という事もあるんですね。

 

結局対策はどうするの?

病的なクレーマーについては

  • 事実でない時は否定する
  • 謝罪は1度ですます
  • 特別扱いしない
  • 個人で対応しない。必ず組織で対応する。
  • 誹謗中傷や噂などは組織で団結して対応する。
  • 学校という組織内で信頼関係が崩壊すれば、そこを突いてどんどんクレームが膨らみ悪循環になるので、必ず組織一致団結して対応すべし

というところでしょうか。まずは、「個人で対応しない」「面談もかならず他の先生の立ち合いのもと」というのが1番はじめのポイントでしょうか。

ただし、この本では、色々な事例が出てきて、もう読んでるだけで正直疲れてきたのですが、まぁ、全体把握としてはよかったと思います。なんだかまとまりないですけど。興味ある方は一読するのも手だと思います。あとは、最近は先生側にも問題ありなケースも多々あるので、モンスター先生について書かれた本も読む必要があるなと思っています。それはそのうち。

 

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